「 営業DX 」とか「営業のDX化」という言葉をよく耳にするようになってきました。
営業におけるDXって何なのかを歴史をもとに紐解いてみて、中小企業ではどのようにDX化を図るべきかを今回は僕(大川)なりに考えてみました。
DXとは
そもそもDXとは何なのか、「DX とは」でググると次の解説がヒットしました。
・デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること
https://monstar-lab.com/dx/about/digital_transformation/
・既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの
概念的には分かったような、いまいちピンとこないようなって感じです。
僕の理解で言うと「ガラケーを持った生活」から「スマホを持った生活」へのシフト、これは誰しもが経験した典型的なDXではないでしょうか。
ではでは営業におけるDXとは何なのかというのが今日の論点です。
これからのDXについては一旦、置いておいて過去20年くらいの営業DXを今日は振り返ります。
メールによる 営業DX
まずはメール。
メールは、こと営業パーソンにとって大きなDXでした。
メールで可能になったのは非同期コミュニケーションです。
同期コミュニケーションというのは顧客や同僚がその場にいたり、電話先にいて同時進行でやり取りできるコミュニケーションのことを指します。
一方で非同期コミュニケーションはやり取りする相手がその場や電話先に居ないコミュニケーションです。
昭和時代はこれが出来ませんでした。
FAXの登場により非同期コミュニケーションが流行り始め、メールにより誰でも非同期コミュニケーションが取れるようになりました。
非同期コミュニケーションによって営業活動はシフトチェンジを強いられました。
興味を喚起する文章を考えたり、魅力的な資料を添付したりしなければならなくなったのです。
Wifiなどモバイルインフラ環境によるDX
続いてはネット環境です。
僕が新人の頃なんかは会社にいないとメールを送ることが出来ず、外では資料作成のみでした。
ところが2009年くらいからモバイルWifi(などモバイルインフラ環境)が登場して、更にはクラウドサービスが普及し始めて、移動中でも喫茶店でも
場所を選ばずオフィス化
することが可能となりました。(可能となってしまいました・・・)
これにより営業活動はシフトチェンジを強いられました。
「今日は訪問件数が多くて内勤業務を進められていません・・」という言い訳を封じられたのです(笑)
もっとハッキリ言うと
サボれなくなった
のです。
※移動の合間の電車の中でもメールを打てるだろ!と。。
よって営業パーソンとしての活動量は確実に増えました。
メールとネット環境は営業の活動量という側面でDXを実現しました。
テクノロジー進化による営業部門への進化圧
逆に言えば
「活動量を上げる」という目的のもと
「メールの導入」「ネット環境の配備」という手段を取り入れたのです。
ただ、今になって振り返ってみると目的があって手段を選んだかというとそうでもなくて、周りがそうなっていったから・・・という環境変化が進化圧となり、手段→目的という順でDXが進みました。
そもそもDXの目的は活動量を上げることではなく、効率と効果の改善だと僕は考えてます。
営業DX による営業効率の改善
先の営業活動量の増加は効率の改善の結果です。
量が増えたのに効率の改善?
と思われるかもしれませんが、僕は効率の改善とは工数の削減のことだと捉えています。
たとえば
「仕事量10に対して10の工数(時間)がかかる」
という業務Aがあるとします。
効率の改善は、この業務Aの工数を減らすことなのです。
さらに「DX」による効率の改善の場合は「誰でもAの工数を減らせるようになること」だと僕は考えます。
一般的には効率の改善というのは、個人のノウハウや経験に基づいた手法と技法によって行われます。
よって、周りに大して効率化を伝播したくても同じ支店内とか部門内に留まります。
これに対してDXによる(仮にITツールの導入による)効率改善だとツール利用者全員の効率化を図れます。
一言でいってしまえば
ツールさえ導入すれば誰でも簡単に工数を削減できちゃうこと
これがDXの効率改善ですね。
メールによるDXはそれまで口頭、手紙、FAXで行っていた業務の工数を大幅に圧縮しました。
なのでこれらは過去のDXによる効率の改善なのです。
では近年、営業においてはどのような効率DXの改善が行われているかというと・・・
・ワークフロー:稟議書などの申請書を社内にいなくても申請できたり、承認できる。
・SFA/CRM(ウチのシステムはこの分野です!!):社内にいなくても顧客情報を参照できるので営業可能、マネージャーはどこでも部下の営業活動や商談状況を把握できる。
・web会議:もはや説明不要
誰もが知っていたり、一度は取り組んだことのなる分野となるとこんな感じでしょうか。
効率DXにより移動時間が減ったり、稟議によるタイムラグが短くなったり、オフィスに戻る面倒がなくなったり、上司部下間や同僚間の情報共有の手間が削減したりしました。
まさに
工数の大幅削減
です。
工数を下げることが出来たから新たな活動量を確保(営業活動量の増加)をすることが出来るようになったのです。
ではDXによって営業効率の改善が出来ることは時代が実証してきました。
営業DX による営業効果の改善
続いては効果の改善について。
本題に入る前に営業効果とは何なのかを定義しておくと、今回は
「受注・成約の可能性を高める因子にプラスをもたらす営業アクション」
のことです。
うん、自分で書いていて何ですけど分かりづらいですね^^;
「受注しやすくなるための営業活動」
うん、何か違う・・・。
「顧客が購入することを決断しやすくする判断材料の提供」
冗長的ですがこれが一番しっくりきました(汗)
場面例を出すと
顧客が欲していた機能について営業パーソンが重点的に説明してくれた・・・
顧客が想定していた費用感に対してドンズバな見積書が一発で出てきた・・・
顧客の担当者が何もしなくても稟議に回せるような資料を提出してくれた・・
これらが効果的な営業活動の一例と言えるのではないでしょうか。
このように営業効果が高い活動を継続的に行うことができれば、お客さんは
『うん、これ買おう!』
『とても良いサービスだ、契約しよう!』
と購入を決断することが増えるはずです。
ではようやく本題です。
この営業DXにより営業効果を高めようっていうのが今日のテーマです。
結論、ITツールを導入するだけでは営業効果を高めることは出来ません。
えー、これだけ引っ張って打つ手無しという話かい!とツッコみたくなる結論ですみません・・・。
ドンズバな見積や気の利いた提案書の提出などは商談経験を積むことで出来るようになります。
その経験を部下や同僚に伝授する際にSFAやファイル共有といったITツールを使うと便利なことは間違いありません。
ただ現代のテクノロジーをもってしても、ノウハウ伝授にあたって便利な程度であって、上述した例のような商談シチュエーションにて上手く打開できるようなITツールは存在しないのが実情です。
つまり
効果の改善は結局のところ、「人」
なのです。
※2022年時点では。
ここがポイントでして、
「営業効果を高めようとしている人が社内にいること」
これこそが営業DXを実現するための肝要だと僕は考えます。
営業DX を実現する人の育成とマネジメント
じゃあDXを実現するためにはどんな人材が必要なのかという話です。
僕、というか当社はSFAという営業部門向けのクラウドサービスを提供しているのですが、このサービスを導入し、活用してもらうための最大のポイントも「人材」です。
人材といってもITに詳しい新たな人材が必要・・・といった新たな人材の採用や登用という話ではありません。
社内人材の考え方と行動のシフトチェンジの話です。
具体的にはTOPと右腕、この2人です。
TOPとは企業規模によって異なりますが、中小企業では間違いなく社長です。
右腕はTOPの意図や方針を営業部門に水平展開する声のデカさと責任を示せる人のことです。
DX推進のキーマンになるこの2人ですが、この2人に求めたい考えが
「社員に対して余裕やヒマを作ってあげること」
です。
通常、社員に対しては精一杯働くことをTOPは求めます。
まあ間違っていません。
ただ精一杯働いている社員に対して、さらに「DXで効率と効果を高めよ」と命じるのは間違っていると僕は考えます。
パツンパツンで働いている中で、これまでやったことのないミッションを課しても上手くいきっこありません。
なのでDXを実現するための大まかなフローはこんな感じになります。
1.社長などDX推進キーマンによる現在の業務の圧縮(削減)を検討
2.1の実施 → ヒマを作ってあげる
3.DX推進
このようにヒマを作ることが出来なければ、DXのような新たな挑戦を行うことは出来ません。
挑戦なのですから余力がないと実現なんて到底できません。
社員にヒマを作ってあげること
これこそが 営業DX の第一歩なのかなーと僕は考えます。
※異論は認めますw
有名なGoogleの20%ルール(仕事に使う時間の20%は将来の大きなビジネスチャンスの発掘や探求に使おうぜというルール)なんかはまさにコレなのかなと捉えてます。
DXに限らず、ヒマがあれば持続的に組織にイノベーションを起こしていくことが可能なはずです。
常にパツンパツンだったら・・・現状維持が良いとこでしょう。
意図的なヒマは迎合しましょう^^;