「ルート営業のKPIを設定したいが、何を指標にすればいいのかわからない」
「とりあえず訪問件数や売上を追わせているが、正直これでいいのか不安だ」
こうした悩みを持つ経営者は非常に多いのが実情です。
ルート営業は、新規営業と比べて成果が見えにくく、気づけば「長年の付き合い」「御用聞き」「成り行き対応」に陥りがちです。
その結果・・・
- 訪問しているのに売上が伸びない
- 営業活動を改善しようにも、何を変えればいいかわからない
- 営業会議が“報告会”で終わってしまう
といった状態になります。
こうした状況を抜け出すカギが KPI(重要業績評価指標) です。
本記事では、KPIの基礎から、ルート営業で本当に意味のあるKPI/やってはいけないKPI、そしてKPIを回す仮説検証の考え方までを経営者視点で丁寧に解説します。
なぜルート営業にKPIが必要なのか
「御用聞き営業」から抜け出せない本当の理由
ルート営業が御用聞き化する最大の原因は、営業担当者の意識や能力ではありません。
「何を成果とするのか」が定義されていないことです。
KPIがない状態では、営業担当者は「呼ばれたら行けばいい」「トラブルがなければ問題ない」「売上が下がらなければOK」といった判断に寄りやすくなります。
これでは改善も成長も起こりません。
KPIがない営業は「振り返れない・改善できない」
KPIがない営業組織では、良かったのか悪かったのかが分からず、売上が伸びた/落ちた理由も説明できません。
結果として「次に何を変えるべきか」も議論できず、営業活動がブラックボックス化します。
KPIは管理のためではなく、戦略を動かすためのもの
KPIは「数字で縛る」ためのものではなく、戦略を実行し、修正するための道具です。
経営者が「営業をどう変えたいのか」を数字で示すためのもの、それがKPIです。
そもそもKPIとは何か?経営者向けにやさしく解説
KPIとKGIの違いを整理する
- KGI:最終目標(例:売上10億円、粗利率○%など)
- KPI:KGIに至るための重要な途中指標
ルート営業におけるKPIは「売上につながる行動や状態」を数値化したものです。
結果(売上)だけを見ても、改善に必要な“途中”が見えません。そこでKPIが必要になります。
ルート営業におけるKPIの役割
- 営業活動の質を揃える(属人化を防ぐ)
- 改善ポイントを見つける(戦略の修正ができる)
- 将来の売上を予測する(先手を打てる)
「数字を追わせる」ことと「戦略を回す」ことの違い
「月◯件訪問しろ」という指示は、数字を追わせているだけです。
一方で「なぜ訪問するのか」「何を得るのか」「それが売上にどうつながるのか」まで設計されたKPIは、営業戦略そのものです。
ルート営業のKPI設定でよくある失敗パターン
行動量だけをKPIにしてしまう(訪問件数・電話件数)
訪問件数を追うと、目的のない訪問や雑談だけの訪問が増えます。
数字は達成しているのに、売上が増えず、むしろ顧客満足が下がることすらあります。これはよくある失敗ケースです。
結果指標しか見ていない(売上・受注額のみ)
売上だけを追っても「なぜ売れた/売れない」が分かりません。
売上、すなわち結果は“起きた後”の数字なので、改善のハンドルになりにくいのです。
現場がコントロールできないKPIを置いている
景気や顧客都合など、営業がどうにもできない要因をKPIにすると現場は疲弊します。
KPIは「現場が動いて変えられる指標」に寄せるのが原則です。
KPIが多すぎて誰も覚えていない
KPIが10個、20個あると運用されません(誰も覚えていません)。
KPIは少ないほど強い。これが鉄則です。
まずは3〜5個を目安に絞るのが現実的です。
「守りの御用聞き」から「攻めのルート営業」へ転換する考え方
守りの営業と攻めの営業の違い
- 守り:問題が起きないように対応する(受け身)
- 攻め:次の売上をつくるために動く(先回り)
この違いは、KPIにそのまま表れます。
KPIを変えると営業行動が変わり、営業行動が変わると売上のつくり方が変わります。

KPIを変えると、営業行動が変わる
- 訪問件数 → 目的あり訪問率
- 売上 → 追加提案件数
- 対応件数 → 次回アクション設定率
「行ったかどうか」ではなく「何を持ち帰ったか」「次につながったか」に寄せるのが攻めのKPIです。
ルート営業は「深掘り型」だからKPI設計が効く
ルート営業は短期成果が出にくい分、プロセスが重要です。
プロセスKPIを置かない限り、改善が回りません。
絶対に入れるべきルート営業の参考KPI(攻め型)
顧客接点の質KPI(質を高める)
- 目的あり訪問率(訪問目的が明確な割合)
- 課題ヒアリング実施率(課題を聞けた割合)
提案活動KPI(売上をつくる)
- 提案回数(提案の母数を増やす)
- 追加提案率(既存顧客へのアップセル・クロスセル)
顧客育成KPI(深耕する)
- 取引深耕率(取引カテゴリ・点数の増加)
- クロスセル率(別商品・別サービス提案の成約率)
関係維持KPI(離反を防ぐ)
- フォロー実施率(設計通りにフォローできた割合)
- 休眠防止率(一定期間未接触、取引STOPの顧客割合を減らす)
将来売上KPI(先手を打つ)
- 見込み案件数(将来売上の種)
- パイプライン金額(見込み売上の総額)
ポイントは、「売上に直結する行動・状態」を数値化することです。
やってはいけない「ダメなKPI」の具体例
次のようなKPIを設定しても売上UPなど成果に繋がる可能性は少なく、むしろ営業組織を壊しかねません。
訪問件数だけを追わせるKPI
件数を追わせると、目的のない訪問が増えます。
「会うこと」が目的化し、成果が薄くなります。
売上だけをKPIにする
売上は結果指標で、改善のハンドルになりにくいことが多いです。
売上とセットでプロセスKPIを置きましょう。
評価と直結しすぎて“数字を作る”行動を生むKPI
KPIが評価と直結しすぎると、記録や運用が「見せるための数字」になりがちです。
KPIは“改善”のために使うという前提を崩さないことが重要です。
現場が「意味を理解していない」KPI
意味が分からないKPIは運用されません。
「なぜこの指標が必要なのか」を経営者が言語化する必要があります。
KPIは「立てて30%、検証して70%」が正解
KPIは仮説であり、正解は最初から存在しない
KPIは「最初から完璧に当てる」ものではなく、仮説です。
立てた瞬間は30%で、残り70%は運用・検証・修正で決まります。
見るべきは「未達」ではなく「なぜそうなったか」
KPIが未達でも、落ち込む必要はありません。
むしろ重要なのは、原因が見えたかどうかです。
KPIレビューで必ず問いかけるべき3つの質問
- なぜ達成/未達だったのか?(要因は何か)
- 原因は「量」か「質」か、それとも「設計」か?
- 次の1週間/1か月で何を変えるのか?
KPIを回すための仮説検証プロセス(経営者向け)
Step1|戦略仮説を立てる(なぜそのKPIなのか)
「追加提案回数を増やせば売上が伸びるはず」など、まず仮説を置きます。
Step2|数値を見える化する
見える化しない限り、改善できません。まずは集計できる形に整えます。
Step3|ズレを分析する
未達の場合は、母数が足りないのか、質が足りないのか、設計がズレているのかを切り分けます。
Step4|KPIまたは施策を修正する
必要なら、KPIそのものを変えるのも正解です。KPIは固定ではありません。
Step5|次の仮説に進む
仮説→実行→検証→修正を回せる会社が、営業組織として強くなります。

KPI管理はどうやる?段階的な管理方法
フェーズ1|ExcelでKPIを可視化する
まずはExcelで十分です。重要なのは「続く形」で小さく始めることです。
フェーズ2|スプレッドシートで共有・定例化する
共有できると、属人化が減り、週次レビューも回しやすくなります。
フェーズ3|SFAでKPIを自動集計・継続運用する
顧客数・案件数が増えると、手作業集計は限界が来ます。
その段階でSFAを導入すると、入力・集計・分析の負荷が下がり、KPIが“回る仕組み”になります。
ツール選定の考え方|管理のために複雑にしない
高機能よりも、運用が続くことが最優先です。
ツールは目的ではなく手段。KPIは“回って初めて価値が出る”と考えましょう。
KPIの立案・検証は「経営者の仕事」である理由
KPIは戦略そのものだから任せきれない
KPIは「会社として何を伸ばすか」を決めるものです。これは経営判断です。
現場任せにするとKPIは形骸化する
現場は日々の対応で手一杯になりがちです。
その状態でKPI設計まで任せると、どうしても短期・作業寄りの指標になり、戦略から外れます。
経営者が見る数字が変わると、営業は変わる
経営者が「訪問件数」を見ている会社は、訪問が増えます。
経営者が「提案回数」「目的あり訪問率」を見ている会社は、提案が増えます。
つまり、経営者の見る数字が、会社の営業文化を作ります。
まとめ|KPIでルート営業は「御用聞き」から卒業できる
ルート営業が変わらない理由は、人ではなく設計です。
- KPIを立てる(30%)
- 検証して原因を掴む(70%)
- 修正して次の一手を打つ
この繰り返しが、御用聞き営業からの卒業につながります。
まずは小さく始め、回しながら育てていきましょう。





